3月にブログを立ち上げてから、アベノミクスが格付け評価に与える影響に関してコメントしてきた
- 3月7日: アベノミクスの格付インパクト
- 4月12日: 日本ソブリン格付けの行方
- 4月18日: 低位投資適格発行体の財務リスクの拡大を容認する経営判断
次は、一般的にポジティブと評価される政府の財政・経済政策でも、企業によってはマイナス効果が大きい先がある点、特に、一見ポジティブ効果があるように見えるが中長期的に信用力が劣化するリスクの高い先に関してコメントしたいと思う 現状、アベノミクス効果に対する期待感を反映して、企業の多くは業績の回復を見込んでおり、企業の信用格付けに対してもプラス効果が働く側面が多いが、株式相場より長い目で個社の状況を分析する必要がある 問題は業績改善を発表する企業の大半が円安効果を語っていること
- 長らく円高に苦しめられていた企業によって、円安はグローバル市場における価格競争力向上に大きく貢献することが期待されている
- 強固なフランチャイズ・バリューを保持する企業、特に超円高環境でも利益を確保できるまでコスト競争力を高めた企業の信用力に大きなプラス効果が働くことは想定できる
注目したいのは、事業ポートフォリオに構造的な問題を抱える企業、特に収益性の低い事業を維持し続けている先であり、それらの事業を再編・撤退できるか否かで、将来における企業価値や信用格付けが影響される点
- それらの事業を再編するにも撤退するにもコストが掛かるが、円安などの収益効果を活用して、収益性の低い事業を整理する企業は中長期的に企業価値や信用力の改善が期待できる
問題となり得るのは、収益が回復したことに甘んじて、構造的な問題の再編を更に先延ばしする企業
- 短期的に株価は上昇しても、中長期的には脆弱なフランチャイズ・バリュー、若しくは、収益性の低い事業を維持する「コスト」を反映して企業価値も低迷してしまう恐れがある
- 信用格付けに関しても、収益・キャッシュフローの質や量が劣化、有利子負債残高が高止まりする状況が続くと、将来的には下方圧力が高まる