金融市場で債権者・発行体の信用力を表現する際に有利子負債/EBITDAやEBITDA/支払利息など、「EBITDA」を使った財務指標が頻繁に用いられているが、実際に債務の返済に充てる事ができるキャッシュフローはEBITDAのごく一部に過ぎないため、EBITDAを債務返済可能と解釈して発行体の信用力を評価すると大きな誤りを起こす恐れがある
EBITDAはEarnings Before Interest Tax Depreciation and Amortizationであり、利払い前、税引き前、減価償却前の利益を示すが、実際に債務の返済に充てることが可能なキャッシュフローは利息、税金、配当金、設備投資など、企業が存続する上で必要な支払を行った後のキャッシュフローである
債務返済に充てることが可能なキャッシュフローは概ねEBITDA - I(支払い利息)-T(税金)- 設備投資 +/-(資産の売却/購入)-/+ 運転資本の増/減 - 株主還元となり、発行体が事業の存続・成長のために必要な先行投資を行いながら債務残高を減らすためには収益性を上げる必要があることが解る
- 利益率、設備投資額、資産の購入/売却、運転資本の増/減等は、個社の事業内容や属する産業のリスク、成長戦略や株主還元政策を反映するため、個社の格付け担当アナリストや格付け委員会にそれらを正しく理解して頂く必要がある
- キャッシュフローで返済できない債務はリファイナンスを行う必要があるが、その際にも一定の収益性を維持できるという前提が必要になってくる
代替案としてフリーキャッシュフロー(FCF)を債務返済能力と解釈することも可能だが、FCFは一時的な要因によって左右され易いという難点がある
- 従って、発行体の潜在的な収益力を分析するには、単年度ベースのFCF見るより、ビジネスサイクルを通した平均を見る方が正確に実態を把握することができる
- それによって、季節性や景気サイクルを通して期待できるキャッシュフローを推測することが可能になる