一般論として、中長期な視野をもって良好な財務指標を維持できると評価される発行体に高い格付けが付与される
実際に格付け評価を行うにあたって、発行体が属する産業のリスクプロフィール、業界内での位置づけや、個社の事業・財務戦略に関わるリスクなども重要な格付け判断要因になっている
- 下記は業種の異なる発行体の格付けと代表的な財務指標を示しているが、標準的な財務指標から格付け順位は推測し難い
発行体 A | 発行体 B | 発行体 C | |
格付け(R&I) | AA | AA- | A+ |
EBITDA利益率 | 23.2% | 13.4% | 11.8% |
総資産利益率 | 1.5% | 1.5% | 3.75% |
有利子負債 / EBITDA | 7.2倍 | 3.6倍 | 2.6倍 |
総債務 / 自己資本(D/E) | 1.2倍 | 1.0倍 | 0.7倍 |
同じ発行体でも、景気サイクルや事業・財務戦略によって財務指標が変動するので、その背景を理解した上で格付け評価を行う必要がある
- 財務指標の悪化が一時的な状況なのか、構造的な課題なのかなどによって格付け評価が異なる場合がある
- 下記は、数年にわたって財務指標が大きく変動しても、格付け(R&I:A+, ムーディーズ:A3)を維持していた発行体の事例
決算期A | 決算期B | 決算期C | 決算期D | |
EBITDA利益率 | 12.1% | 12.7% | 13.9% | 9.8% |
総資産利益率 | 6.0% | 4.8% | 6.3% | 1.9% |
有利子負債 / EBITDA | 1.8倍 | 4.0倍 | 2.0倍 | 3.5倍 |
総債務 / 自己資本(D/E) | 0.5倍 | 1.1倍 | 0.6倍 | 0.9倍 |
格付け会社はあらゆる観点から発行体の収益性や財務健全性を分析するため、多数の財務指標を参照する
業績見通しを反映した財務モデルを基に格付け評価を行うアプローチもあるが、前提の置き方や未確定要因の織り込み方次第で結果が左右されるという問題がある
- 企業の破綻は物事が想定通りに進まない時に起き易くなることを鑑みると、財務モデルを基に発行体のデフォルトリスクを推測することの限界も認識する必要がある