格付け会社各社のホームページ等で格付け実績やデフォルト統計を公開しているが、解釈する際に留意を要する
- R&Iが公表している平均累積ベースで見ると、格付け付与後5年以内にデフォルトした発行体は、AA格が0.04%、A格で0.62%、BBB格が1.09%、BB格が7.53%
- しかし、格付けが付与された年度毎のコホート別データを見ると、デフォルト実績の変動は非常に大きい
- R&Iのデータによると、AA格を付与された発行体が5年以内にデフォルトした事例は0%~1%弱、A格を付与された発行体は0%~2%、BBB格を付与された発行体は0%~3%、BB格を付与された発行体は0%~29%
注記:上記の集計対象は、原則として1978年以降、R&Iの信用格付を取得した履歴のある日本国籍の発行体全て。ただし、ソブリン、地方自治体、生命保険会社、資産担保証券の発行体は除外している。学校法人、投資法人は含む
統計として公表されている格付け毎のデフォルト率は過去の実績であり、現時点における個別債務や発行体のデフォルト確率を占うものではない
- 一般的に事業環境が良い時にデフォルトリスク率は低下し、事業環境が悪い時に上昇する傾向がある
- 更に、景気変動やその他外部環境の変化が個別発行体の信用力に与える影響や感応度は、産業の特性や事業ポートフォリオ構成によって異なる
- 過去の実績値のレンジが大きい点は、ポートフォリオおよび個別エクスポージャーリスクの管理上、注意を払う必要がある
- 他の格付け会社のデフォルト統計もR&Iと似た傾向を示している
格付け会社間で信用リスクを表現する尺度が統一されてないため、デフォルト実績を直接比較できない
- 例えば、格付け会社によって、「投資適格」と見なすのに妥当とされる状況が異なるため、同じBaa/BBB格でも、格付け会社間で期待するべきデフォルトリスクは異なる
- デット・エクイティスワップ(DES)や債権者に不利益となるような債務の条件変更(例:ディストレスト・エクスチェンジ(Distressed exchange))をデフォルトと見なすか否かの考え方の違いも各社のデフォルト統計を影響する
- 更に、各社の集計対象となる発行体・標本数や統計の対象とする期限等が異なるため、統計的な観点からも比較し難い