格付け会社のアプローチ

格付け会社のホームページにそれぞれのアプローチが公表されている

  • 米系の格付け会社はスコアカード(ムーディーズ)やマトリックス等(S&P)を活用して格付け評価基準を表現している
    • もともと、格付け結果を説明するためのツールとして作成された由来がある
  • 日系格付け会社もS&Pに類似したアプローチを適用しているものの、S&Pほど明確な開示はしていない状況

ムーディーズでは業界毎にスコアカードを作成しており、一定基準をもって業界内でのランク付けを行い易くなっている

  • スコアカードは主要要因やサブ要因評価の加重平均を格付けとするアプローチであり、複数のシナリオを基に算出されたスコアは総合評価を行う上で重要なインプットとなる
  • 地域によってリスクが異なる場合や、発行体が複数の産業に関わっている場合などは、実態と異なるスコアカード結果がでる事もある
  • 日系企業に関しては、金融機関との関係などを別途織り込み、実際の格付けは1~3ノッチ高く評価されているケースが多い

S&Pの格付けマトリックスは事業リスクプロフィールと財務リスクプロフィールのマトリックスを基に格付けを決定するアプローチ

  • 事業リスクプロフィールは発行体が属する産業のリスクや個社に関わるリスクを基に、収益・キャッシュフローの規模や安定性を評価
  • 財務リスクプロフィールは主に収益・キャッシュフローと負債のバランスや財務構成を評価
  • 双方の評価に関してアナリストや格付け委員会の裁量も反映し易いため、柔軟性があるアプローチだが、決定された格付け水準に関して更なる説明を要する場合もある

米系の格付け会社は現状の格付けを維持する上で期待されている財務指標の目安も公表している

  • 格付け対象会社に適用される目安となるレシオは、個社のリスクプロフィールや経営課題を勘案した上で設定されているため、スコアカード(ムーディーズ)や財務プロフィール・マトリックス(S&P)が示す一般的な財務指標の目安と異なる場合がある
  • 事業環境や格付け会社の考え方の変化と共に、主要な評価要因や格付け毎に求められる財務指標のレベルも変わる可能性があるので、スコアカードやマトリックスが示唆する格付け水準にとらわれ過ぎないように注意する必要がある

日系の格付け会社は格付けを行う上で重要と思われる課題を紹介しているが、財務指標の目安は公表してないため、格付け水準を推測するには更なる分析を行う必要がある

  • 格付け維持の目安となる財務指標を公表しない理由として、財務レシオが1人歩きしてしまう恐れがあるとされているが、長年米系格付け会社によって公表されている財務指標目安は単なる目安として問題なく受け入れられているのも事実

格付け審査のプロセスは、格付け対象会社や債務の履行能力をランキングするものであり、破たんする確率を予言するものではない点を留意する必要がある

  • より多くの発行体や債務を統一した尺度を適用して相対評価を行うことが目的とも言えるが、その尺度は格付け会社の主観に影響される
  • 最も、格付け会社は特殊な予言能力がある訳ではない点は言うまでもない

格付け会社各社のホームページへのリンク