S&Pが事業会社の格付け規準改訂案を発表

アップデート:S&Pが日本語版のレポートを発表

ソブリン、金融機関、保険業界の規準改訂に続くもの

「意見募集」の形式で公表されており、コメントを提出する期限は9月16日

下記は意見募集への無料リンク (現時点では英語版のみ、サイトへ登録する必要あり)

更に、有料購読者向けには、暫定的に38業種の“Industry Risk Score”が公表されている

  • 「Standard & Poor’s Assigns Preliminary Industry Risk Assessments To 38 Nonfinancial Corporate Industries」

S&Pによると約1割程度の発行体格付けに影響を及ぼす可能性があると推測されており、そのうち約8割から9割は±1ノッチの変更になる見通し

規準改訂案の特徴

  • 検討されているアプローチは、よりマクロ的な要因を組み合わせたマトリックスから始め、そこから個社特有の要因の評価によってノッチアップ・ダウンして格付けが決定するプロセスであり、既に改訂された金融機関や保険業界のアプローチとの統一感がある
  • 改訂案でも現状の格付け規準で使用されている、事業リスクプロフィール・財務リスクプロフィールマトリックスを引き続き活用するが、評価要因の一部(金融機関との関係によるサポート要因など)は当マトリックスの枠組みの外で評価されるようになる見通し
    • 財務リスクプロフィール評価はキャッシュフロー対有利子負債などを重視し、有利子負債/総資本は改訂案から外されている模様

規準改訂案の要約

  1. “Country Risk Assessment”(カントリーリスク評価)と”Industry Risk Assessment”(事業リスク評価)のマトリックスから”Corporate Industry and Country Risk Assessment”(CICRA)スコアを付与
  2. CICRAと“Competitive position assessment”(競争力評価)スコアのマトリックスから、”Business Risk Profile Assessment”(事業リスクプロフィール評価)スコアを付与
  3. “Business Risk Profile Assessment”と”Financial Risk Profile Assessment”のマトリックスから、”Anchor”格付けを付与
  4. “Anchor”格付けに、事業の多様性、財務構成、流動性、財務ポリシー、マネジメント及びガバナンスに関する評価や他社との相対的評価を反映するために、規準で指定された範囲内でプラスマイナス調整を行って“Stand-Alone Credit Profile”(SACP)を付与
  5. SACPにグループ企業や政府によるサポート要因を反映したものが発行体格付けとなる

個社の格付け評価に関わる分析課題

  • CICRAスコアについて
    • 当スコアは格付け評価プロセスの出発点である
    • 複数の国々で複数の事業を営む発行体のCICRAを付与する際には、規準で定められた“Industry Risk Assessment”スコア及び“Country Risk Assessment”スコアを事業構成比率に応じて加重平均して算出する考え
    • 規準が定める結果が個社の事業リスクを正しく反映するものか精査する必要がある
  • 財務リスクプロフィールについて
    • 収益性やキャッシュフローはグローバル企業対比低いが、自己資本比率は比較的高い発行体の財務リスクプロフィール評価は悪化する恐れがある
  • 流動性およびサポート要因
    • 現状の格付け規準では、金融機関との関係やグループサポート要因などの格付け引き上げ効果を総合評価の一環として最終評価に反映するケースが多いが、改訂案では”Anchor”格付けやSACPよりノッチアップとして最終評価に反映する考え
    • 新規準ではノッチアップが認められる条件が明記されており、それをクリアするのか精査する必要がある

個社格付けへのインパクトの分析および意見の提出をサポート

  • 格付け規準改訂案がそのまま導入された場合を想定して、個社の格下げに対する耐久力および格上げされる蓋然性に与える影響を精査
  • 不当に不利な格付け評価になり得る場合は、より説得力のあるアプローチで意見を提供できるようサポート致します