JCRは5月1日にAvanStrateをBBB-に格下げ、見通しはネガティブを継続
- 液晶用ガラス市況の低迷による業績悪化、構造改革に伴う費用の特別損失計上による自己資本の毀損が格下げの要因
業績の悪化や自己資本の毀損を理由とする格下げ事例は数多くあるが、その際にデットキャパシティや資金繰りにも注意する必要がある
- AvanStrateに関しては債務償還スケジュールが問題になり得る
- 当社の決算資料によると、今期中に満期を迎える社債が200億円、返済期限を迎える長期借入金が90億円、その他ファイナンスリース等の支払い義務が存在する
- 更に、来年度は280億円の長期借入金の返済、再来年は180億円の長期借入金の返済と100億円の社債が満期を迎える予定
- 平成24年9月末に約330億円あった自己資本と比較すると、必要資金調達額は決して小さくはない
- 金融機関は返済期限を迎える借入金の借り換えに応じる傾向はあるものの、義務はない
- 社債の償還資金を資本市場で調達できない場合は金融機関から新規の融資を受ける必要があるが、既存の優先債権者の位置付けを考慮するとハードルが高くなる
- アッセットファイナンス等による調達も可能であろうが、提供できる担保に制約される
- 更に、来年度以降にも多額の資金調達を必要とする状況は、今年度の資金調達に影響を及ぼす可能性がある
借り換え資金の借入条件が厳しくなるリスクと財務的インパクト
- 既存の債務を調達した時点での格付けはA-(安定的)に対して、現状は当時より3ノッチ低いBBB-、且つ見通しもネガティブ
- 調達する資金に対するリスクプレミアム(スプレッド)が上昇すると支払利息も増加する
- 年限が短くなると、借り換えの頻度や一度に借り換えを必要とする金額が増えるため、流動性リスクが高まる
- 将来キャッシュフローを先取りする形式のアセットファイナンスは、将来キャッシュフローを圧迫する要因になる
金融機関の融資姿勢が明暗を分ける要因になる
- ハイ・イールド債券(High Yield Bond)マーケットが発達してない日本では、金融機関の融資姿勢が企業の資金繰りをより大きく影響する
- シャープは金融機関が新規融資に応じたことで破たんを回避できた代表的な事例
- 昨年の夏、約3600億円のコマーシャルペーパー(CP)の償還や運転資金の調達で悩んでいた時に、メインバンク2行のリードで多額の新規融資が実施され、その後も債務返済に向けて融資枠が拡張されている
- 一方、債務償還に充てる資金調達の目処が立たなかったことがエルピーダの破綻の切っ掛けとなった
JCRによるAvanStrateの投資適格評価は、金融機関が借り換え資金を供給し続けることを前提としていると推測
その評価には、当社の属する業界の特性や位置付け、事業戦略や業績見通しなどに関するJCRの見解が反映されている
- 一方、当社の業績がJCRの想定するスピードで改善しない場合には、格下げ圧力がさらに強まることが想定される