アベノミクスの格付インパクト

昨年末から、アベノミクス効果に対する期待感を反映して、株価は上昇している

  • 円安の恩恵を受けて業績の改善が期待できる企業が数多くある上、長期のデフレを脱却することに成功して名目経済成長率が上昇すれば、他の企業も恩恵を受け、政府の税収が伸び、財政収支が改善することも期待できる
  • このシナリオがある程度実現すれば、日本政府や多くの企業の格付けにはポジティブの影響を与えることが期待される

一方、今までのアベノミクス効果は全てポジティブではないことも留意する必要がある

  • 円安は輸出企業にとってポジティブに働くが、原料や製品を輸入している企業の原価に上昇圧力が掛かり、業績が圧迫される蓋然性が高まる
  • 個人レベルでは食品、電力やガソリン価格の上昇が家計を圧迫しており、それに伴い賃金への上昇圧力が高まっている
  • 原価や人件費の上昇を販売価格に転嫁できる企業の一部ではすでにベースアップに応じる方針を示しているものの、それができない企業も数多くある

個人所得がインフレに追いつかない場合は消費が伸び悩み、経済成長率も圧迫される蓋然性が高まる

  • 仮に給与支給額が毎年インフレ率と同じ2%増加しても、累進課税制度の影響で個々の従業員の手取りはそれほど増えない
  • 従って、アベノミクス経済政策が成功するためには、雇用も同時に増える必要がある

政府の財政収支が改善しても、インフレ率が想定どおりに上昇すれば金利も上昇する

  • 収益に対して借入残高が多い企業のカバレジレシオは大幅に悪化する恐れがあり、格付けや資金繰りへも悪影響をもたらす蓋然性が高まる

このように、一般的にポジティブと評価される政府の財政・経済政策でも裏目に出る要因も数多くあるため、個別発行体の信用力に与える影響は慎重に分析する必要がある

  • 格付け会社によってマイナス評価を受ける蓋然性が高い発行体の格付け対策として、自ら分析を行った上で必要な対策と共に担当格付アナリストに説明する必要がある