未確定要因の織り込み方

マクロ・ミクロ経済の動向や規制・競合・技術革新などの側面を含む事業環境の変化、経営目標の実現可能性などは、発行体の信用力に大きな影響を及ぼす要因であるものの、正確に予測する事は不可能であるため、格付け会社の主観に基づいた判断が個社の信用格付けを影響する

このような未確定要因に関する考え方は「定性要因」の評価の一部として格付け判断に反映される

  • 発行体が属する産業や個別事業のリスクに関する印象や考え方
  • 事業・財務戦略や経営管理能力に対する評価
  • 経営者の質やリスク選考度に対する印象、など

これらを含む「定性要因」は、発行体の業績やキャッシュフローの見通しに対する評価、すなわち「定量評価」・「財務評価」を影響する

  • EBITDAの向上を期待した今後のレバレッジ改善度合い
  • 内部留保の蓄積を期待した今後の自己資本比率の改善度合い
  • キャッシュフローの規模と資金の活用方法に関する期待
  • 製品・サービスの競争力や参入障壁に関する評価
  • 政府、企業グループ・関連会社などが発行体をサポートする蓋然性とサポートが提供されるタイミングやサポートの質、発行体が他社を支援する蓋然性と想定するべき財務負担
  • 現状の財務体質が格付けに対して弱いと判断される場合、期待する水準に改善するまで発行体に与える猶予期間、強い場合は、その状況が維持される蓋然性(格上げを検討するか否か)、など

格付け会社は株式アナリストより長い視野で評価する必要がある上、頻繁に格付けが変更されるのも望ましくないため、格付け評価を行う際に「定性要因」に対する評価がより重要になる

格付け会社内部では未確定要因の織り込み方の統一感を高めるために最善の努力を尽くしているものの、実際は個別案件によって状況が異なるため、ケース・バイ・ケースの判断になることが多い