消費税率の引き上げと日本国債の格付け

10月1日に安倍首相が発表した、消費税率の引き上げ・経済対策が日本国債格付け(ソブリン格付け)に与える影響を精査

格付け会社各社は、中長期的に現在の格付け水準を維持するためには、日本政府は国の財政を立て直す必要があると指摘している

  • 消費税率の引き上げは、財政赤字を削減することに貢献するため、格付け評価においてはポジティブに評価するとも表明

消費増税で増える財源の大半は、経済刺激策の支出によって相殺されるため、当初の財政赤字の削減効果は期待できないが、増税を実施することで中期的に歳入を増やせる道筋が整うことは評価するものと推測

実際に財政赤字が縮小するか否かに関するシナリオは大きく分けて二つある

① 追加的な経済刺激策を実施しなくても再来年以降の民間需要が増加し続ける

② 民間需要が伸び悩み、追加的な経済刺激策が必要になる状況が続く

シナリオ①に近い結果になれば、日本国債の格付けは安定するが、シナリオ②に近い結果になると、格下げ圧力は更に高まる

  • 8月15日に格付投資情報センター(R&I)が発表したレポートでは、「予定通り消費増税を実施したとしても、景気への負担を緩和するために、国債発行に依存した補正予算の策定や減税措置など、財政健全化目標の達成をますます難しくするような財政運営が行われる場合には、格付に下押し圧力がかかってこよう。財政の健全化を実態として確認できる状況に無い場合には、方向性をネガティブにする可能性がある。」とコメントしている。

直近の短観によると、足元の経済環境は回復基調に向かっている模様だが、何だかの理由で国内外情勢が悪化するようなことがあると、株価や民間需要が落ち込んでしまい、財政再建が実現しないリスクが高まる

  • 例え、日本国債が格下げされても、増え続ける国債残高の大半を国内企業や個人の貯蓄が消化している限り、金利上昇圧力は抑制されるが、国債の供給(残高)が需要(貯蓄等)を上回ると、値下がり(国債の利回りが上昇)圧力は高まる
  • 金利が上昇し始める前に効果的な「民間投資を喚起する成長戦略」(アベノミクスの第3の矢)が策定・実施されることを期待したい